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第二章 † ②持ち前の運動神経を試されるとき。

 幸い枯葉がクッションになり、腕や足に擦り傷を負っただけで済んだものの、随分奥まで落ちたらしい。見上げると、頭上には木の枝枝が張り巡らされていた。  斜面を滑り落ちたおかげで新調したばかりのチャコール色のスーツは泥だらけだ。 「ああ、もうっ!」  カルヴィンは自分の運動神経の無さに呆れながら手元から離れた懐中電灯を拾い上げる。  重い腰を起こせば、前方に動く人影が見えた。 「誰だ、そこにいるのは!!」  動く影に懐中電灯を照らせば、青白く光る二つの目が浮かび上がる。  そこにいたのは年の頃なら三十前後の男だった。  彼はとてもハンサムだ。後ろに撫でつけた襟足までの短い黒髪に、整った双眸。カルヴィンのように細身ではないが、筋肉質でもない。服の上からでもわかる若さゆえの引き締まった力強い肉体はチュニックとジレの上からコートを纏っている。それから長い足にぴったりと張り付くようなボトムと底が厚いブーツ。その姿はまるで闇に溶け込むかのようだ。白のジレとチュニック以外はすべて、漆黒色で統一されていた。  彼の服装はどこからどう見ても樹海に赴く格好ではない。  そもそもこんな人気のない場所で彼はいったい何をしているのだろうか。  カルヴィンは目を細め、何気なく懐中電灯をうろつかせた。  ――瞬間、自分の目を疑った。  それというのも、彼の斜め下に白骨化した遺体があったからだ。  彼は間違いなく重要参考人である。 「警察だ! 署まで同行してもらおうか!」

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