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第5話
誰もいない教室。
そして窓から見える夕陽は暖かくて僕の唇に残った熱は夢じゃない事を知らせる。
唇にそっと指を触れてあの人の事を思い出す。
「オーウェンがお前に気があると思うなよ。」
「誰!あっ、アルバート・エドワーズ。」
「呼び捨てかよ。アラン・エヴァンスは生意気だな。」
「えっと・・すみません。」
オーウェン様といつも一緒に居るはずのアルバート・エドワーズが1人で居るなんて初めて見た。
そしてまた突き刺さる眼差しで僕を見ている。
「忠告だ。オーウェン・ウィルソンには近づくなアラン・エヴァンス。」
「僕は・・・。」
僕を見るアルバート・エドワーズは鋭く冷たい目をしていて僕は息を飲み言葉を詰まらせた。
近づくなんてただ見てるだけで良かったけれど今日のオーウェン様の口付けで僕は舞い上がっていた。
もしかしたら僕がお側に居れるかもしれないと高望みをしてしまっていたのをこの人が忠告しに来た。
「分かったのか?アラン。」
「はい。近づきません。」
「その言葉を信じるよ。アラン。」
また冷たい目で僕を見て冷酷に笑うとアルバート・エドワーズは足早く教室を出て行ってしまった。
僕は力なく床に座り込むと頬に伝う暖かな涙を拭いながら思っていた。
落ちこぼれな僕が望んではいけないと分かっていますけれど気持ちを抑える事は出来ません近づきませんから見ているのは良いですか?
どうか僕からこの気持ちを奪わないで下さい。
お願いします。
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