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第3話

 そして今日がその金曜日。 別に忘れていたわけでもないけれど、どうしたらいいかわからなくてとりあえず教室に居た、という訳だった。 「で、何すればいいの」 「あー、うん、そのまま窓の外見てていいよ」 「この時期のこの時間ね、すごい夕陽の射し込み方が綺麗なんだ」そう言うと楽しそうに立ち上がって少し距離を取る高野。 そのまま、と言われてじっとしてみたはいいがやはり落ち着かない。 カシャ、カシャカシャ、 シャッターを切る音だけが教室に響く。 あ、団の練習終わったんだ、とか 運動部も片付けしてる…とか。どこを見てればいいかわからなくてキョロキョロしてしまう。 「なあ、まだ……」 そう言って高野の方に向き直ると カメラを持ちファインダーを覗かずに、俺の方をじっと見ていた高野と目があった。 「あれ、こっち見ちゃダメじゃん、へへ、すごいね、綺麗だよ、やっぱり指田くんで正解だ。だって……」 よくまあそんな恥ずかしいことを言えるな… 少し待ってみても だって、の後をなかなか口にしない高野。「何?」とたずねてみても「何でもない」とへらへら笑い、またファインダー越しに俺を見てシャッターを切り始めた。 「一緒に帰ろうよ」 一頻り撮り終わったらしく、カメラケースにカメラやレンズを片しながら声をかけたきた。 「あ うん。いいよ、高野このへんなの?」 「いや、えっとね、むこーうの方!」 「……いやわかるわけなくない」 「あっは、確かに!指田くんは自転車だよね」 「そうだけど……」 よく知ってたな、と思った。なんせ高野とは先週はじめて喋った、はず、だ。

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