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第4話
自転車置き場へ並んで歩く。その間、高野は嬉しそうにカメラの画面を眺めている。
ニヤニヤと笑っているから「変な顔でもしてた?」と聞きながら画面を覗き込んでみた。
「うっわ!なに」
「いや、笑ってるからさ、俺おもしろい顔してた?」
「そんな!指田くんはかっこいい!」
「え、あ、うん?ありがとう…?」
「あ、いや、変な意味じゃなくて…いや…」
いやいや、かっこいいけど、そうじゃなくて…とブツブツ言いながら早足になった高野は俺を置いてまっすぐ歩いて行った。
自転車置き場とは違う方向に。
「ねえ、そっちじゃない。自転車取ってくるからここで待ってて」
「え!あ、まじか、わかった待ってる。」
えへへ、と振り向いた高野の顔はなんだか赤く見えた。夕陽のせいか、道を間違って歩いていたのが恥ずかしかったのか。まあどちらでもいいか、と自分の自転車を取りに駐輪所に入っていった。
「お待たせ」
「あ、うん。ね、見て」
「ん?」
高野が画面を俺の方へ向けて見せた。
そこには夕陽に包まれ窓の外へ視線を向けている俺が写っていた。
「…やっぱりさ、俺じゃない方がよくない、ほらクラスの…えっと…小林さんとか、可愛いじゃん」
「え!?指田くんって小林さんが好きなの?」
「いや別にそんなこと言ってなくない…」
「好きじゃない?」
「いやまあ可愛いなあとか、思うけど」
ああいう子が好きなのか…またブツブツ言い始めたそいつを見て なに言ってるんだ、と思いながら言い直した。
「モデル、頼むんだったらもっと可愛い子とか、綺麗な子とか、男でももっといけてる奴に頼んだ方がいい写真になるんじゃないかなって、思った。」
自分で言うのも嫌だけれど俺は顔がめちゃくちゃ良いとか、背が高くてモデルみたいに手足が長いとかでもなくて、本当に平々凡々。身長169㎝、体重60㎏…気になって平均身長を検索したらばっちり高校2年男子の平均だった。まあ平均ないよりはマシだって自分に言い聞かせているくらい平均。ちなみに成績だって中の……上ってことにしとこう。ほとんど真ん中だけど。
「あーのーさー、それじゃ駄目なんだって」
指田くんがいいの!と頬を膨らませて拗ねたようにみせてきた。女の子だったら可愛いのかもしれないけど、高野は男だ。思わずブッと吹き出してしまった。
「あー笑った!指田くんひっどい!俺は多分ね、指田くんのこと世界で一番良く撮れる自信あるな」
なんの自信だよ、と思う。
考えていたことが顔に出ていたのか「またいつかね、最高の写真が撮れたら理由教えたげる」なんて言われてしまった。最高の写真、か……ん、いつか?
「…え、待って、まだあるのこれ」
だって本当に良いモデルだったんだもーん!とすごい無邪気な笑顔を向けられた。男が だもん、て。だもんて言うな。
そう思っていると高野がスッと手を差し出してきた。それはそれは満面の笑みで。
「これからよろしくね、俺のモデルさん」
「えええ………」
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