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第5話
「さーーーしーーーだ!」
ドンッガンッ
すごい音がした、それにすごい後頭部が痛い。その原因を作ったやつは目の前にいるこいつ、笹原 光 。通称ひかりちゃん 。(クラスのほとんどの人が みつる と読めずに ひかり で浸透してしまった)
「なに、光、すっごい痛い、ガラス割れたらどうすんの…」
「えー!そんなのさっしーの石頭が悪いんじゃん、俺のせいじゃないから気にしなーい」
ほんとうにひどいやつ、光とは中学から同じ学校で高校も同じところだという理由で高校に入ってから仲良くなった。今では 一番か?と思うくらいには仲が良い、と思っている。
光の身長は164㎝と周りと比べたら見たら少し低いか?くらいでも、俺が180㎝190㎝ある巨体ならまだしも169㎝なもんでこのタックルを止める力はそんなにない。
「てかなに、光。わざわざこっちのクラスまできて、用事あるんだろ?」
ノロケなら聞かない、と一応制限をかけておく。知り合って5年も経つと大体どんな話かはわからないこともない。
「いや違う……ノロケじゃない……、また浮気された!かも!って…思って…」
「いやまたって、前は犬相手に勝手に嫉妬して、その前はなんだっけ、スッポン?」
「でも!犬とかスッポンにチヒロとかスズとか勘違いしそうな名前つけて俺に喋ってくるあの人が悪いんじゃんか……ほんとに浮気かと思って俺…」
「で、今回は?」
浮気なら恋人にその話はしないだろう、と思いつつ黙っておく。そういえば次は移動教室だったので用意をしながら尋ねてみる。
「次はハナちゃんって子の話ばっかしてくんの…走ってる姿が可愛いんだって、こねくりまわしたくなるんだって…はっ、俺も走ろうかな」
俯いて話していた光が、そうか!という顔で急にバッと顔をあげた。
「いや走らなくていいと思うんだけどさ、ひかりちゃんの彼氏 さんって、ゲイでしょ?女の子に浮気することないんじゃない」
そうか!という顔をしているけど、そのことは自分が一番知ってるだろうに、と思う。バイセクシャルならまだしもゲイの人が女の子と、なんて普通は考えないだろう。
高校に入ってから光と仲良くなって、何ヵ月か経った頃にゲイであることをカミングアウトをされた、そりゃあ驚いたけど…それより前に見た光のスマホのホーム画面ががっつり彼氏さんとのツーショットだったもんで薄々感づいてはいた俺としは「やっぱりな」と納得して終われるレベルの驚きだった。
「仲良いんでしょ、彼氏さんと。こないだも朝帰「うわああああ!」
何で知ってんの!と顔を隠して照れているけど、この前ノロケてきたときに嬉しそうに話してきたんだけどな…
光の彼氏さんは大学生らしい、年上なのにふいに見せる顔が可愛くて堪らないらしい。会ったことないけど、光のせいで情報ばかり増えていく。
「あ、でね、こないださ」
あ、まずい始まってしまった。そう思ったのももう遅くて、光のノロケ話が始まいそうになっていた
その時
「ねえ指田くん、もうチャイム鳴っちゃう」
「え、ああ、ほんとだ…ありがとう高野」
いつのまにか光の後ろに立っていたのは高野だった。
なんだか不機嫌。お腹空いてるのか、まあ昼前だしな。
「光も教室戻りなよ」
教科書とノート、筆記用具を持って立ち上がり光の頭をポンポンと叩いて教室を出た。いつの間にか教室に居たのは俺と光と高野だけだったらしい。
「高野ありがと、光につかまって遅刻するとこだった」
「あ、うん、…指田くんはさ、ひかりちゃんと…」
ひかりちゃんと、の先をなかなか言わないので「何?」と聞いてみたら「何でもない!」と誤魔化されてしまった。
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