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第6話

 6限の授業が終わり、人混みが苦手な俺はいつものように帰宅ラッシュが過ぎるのを教室で座りながら過ごし、光のことを待っていた。 家も近所なのでよく二人で放課後も話ながら帰ることが多い。 いつもなら光が来る時間を過ぎているのに今日はなかなかこない。ふとスマホを開いてみると『今日先帰る!』というメッセージと走っているウサギのスタンプが送られてきていた。 彼氏さんに好かれるためにほんとに走るの始めんのかな、あいつならやりそう、なんてことを考えながら人が少なくなった教室を出るために席を立った。 ロッカーにつくと後ろから「指田くん!」と声をかけられた。誰?と思いながら振り向いてみるとその声の正体は高野だった。 「あ、高野、今帰るの?」 「え、あ、うんそう!今帰る!」 「そっか、友達待ってるの?また明日」 「え!!いや俺が待ってたの指田くん!」 え、俺?というと、当たり前じゃん!なんて返ってきたけど何が当たり前なのかよくわからない。 ていうか当たり前ではないような気がする…… 「何かあった?ていうか同じクラスなんだから教室で話してくれれば良かったのに……」 「だってひかりちゃんいつも来るから…」 「光?」 「ひかりちゃんと指田くん仲良しだからさ~入る隙ないっていうか」 そこまで、ではない気もするけど 周りからみたらすごい仲良しなのかもしれない、5回ある休み時間の(昼休みは勿論、他の10分休みも)3回くらい、週にして15回くらいは光がうちのクラスに来るし、放課後はほとんど一緒に帰っていた。 …確かにこれは仲良しだ。小学生の頃に流行ってた言葉を使うなら『ニコイチ』 でも、そこまでして他人に聞かれたくない話(だと俺は思ってる)ってなんだろう、深刻なことを打ち明けられるくらい仲良くない。だって一度写真を撮り撮られただけだ。 「それで、どうしたの」 「あ!うん、あのね」 ゴソゴソと鞄を漁りながら目当ての物が見つからないのかムッという顔をしている、と思ったら見つかったらしく ワッと笑顔になった。 そんな百面相高野(ちなみにこれは今つけたニックネーム、なかなかしっくりきた)はスマホを取り出してスイスイと操作しQRコードを見せてきた。 「……連絡先?」 「そう!やっぱりさ、モデル頼むにあたって連絡は大事だよな!」 「え、あ…あーーー………」 「な?」 すごいキラキラした目で見られてる。 連絡先のひとつやふたつ、減るものじゃないしなんとも思わない。けどまた写真、と思うと気が進まない。 「連絡先交換するのは全然良いんだけど、やっぱり俺以外にモデル頼んだ方が……よくない?もっとこう感じいいやつとか、ほら、光とかどう?」 光は背は高くないがそれなりに整った顔をしてる。女の子に告白されてるのをよく見るし、廊下でも男女関わらず「ひかりちゃーん!」なんて言って声をかけられている。 自分のスマホをズボンのポケットから取り出して「追加しとくね」と言い高野のQRコードを読み取った。 スマホの操作を終えて顔を上げて高野を見てみると なんていうのか、すごい拗ねてる。 わかりやすいくらいに顔に出てる。 「俺は指田くんだからいいんだよ、本気なんだよ」 そこまで言われてしまったらなんだか申し訳なくなってきた。 「…俺でいいなら、協力、するけど…部活もバイトもしてないし。」 押しに弱い性格もどうかと思う。拗ねていた顔がだんだんと明るくなって、尻尾をパタパタ振る犬みたいに見えてきた。 「じゃ、じゃあ!また連絡する!あ!あとこないだのデータも送るね!」 ばいばい!と早口で言ってすごいスピードで走っていってしまった。なにか用事を思い出したのか、あ、そういえばあいつの深刻そうな話を聞いてやれなかった。明日は火曜日、また明日にでも聞いてみよう。

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