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第7話
教室に入ると数人の男女に囲まれた高野と目が合った。
「あ!指田くん!おはよ!」
「………おはよう」
犬の耳と尻尾が見える、ものすごいスピードで尻尾をブンブンしてる…
席から立ったワンコ は「さっきの間 、なにー?」とケラケラ笑って近づいてくる。
高野とは去年は別のクラスだったから今年に入るまで関わることがなかったから知らなかったけど、あいつの周りには常に人がいる。
男女問わずに好かれるのは高野の人懐こい行動言動からだろう、
かくいう俺は普段は光と二人なことが多いが、さすがに1年2年と光と別のクラスで過ごしているので友達はいる。ただ、囲まれることもないし、まず女の子となかなか喋ることがない。
光目当ての子には話しかけられるけれど。
「そうだ、なあ高野」
「んー?」
「昨日なにか話しあったんだろ?」
「へ?なにが…」
「いや、光がどうとか…」
少し考えた高野が「あー!」と大きな声を出した。
「あれは、指田くんと連絡先交換したかっただけー」
えへへー、と人懐こい笑顔を見せるそいつ。男相手なのに不覚にも可愛いと思ってしまった。
ほんと犬だ、大型犬。
連絡先の交換くらいなら誰がいてもいいだろうに、と思ってしまうけれど。
「あ!そうだ!俺撮りたいところがあって、今度の日曜日って空いてる?」
「日曜…は大丈夫」
「ほんと!また詳細送るわ!」
それだけ言うと元居たところへ帰っていった。
**
「………まじでキモい顔してるよ今」
「聞きたい?聞きたい?」
「誰も聞きたいって言ってない」
「しょーうがないなーー!」
いや話す気しかなかっただろう、という言葉は飲み込んで光のスマホを覗く。
3分くらい、いやそれ以上の時間スライドしてないか?というレベルの多さの写真だった。
横顔や後ろ姿、眼鏡をかけてたりタバコを吸ってたり、確かにすごいイケメンだと思う。
スイスイとスライドさせていたら、明らかに事後だろうという写真が出てきた。
「うっっわあ!!!これはダメ!」
恥ずかしそうに隠したけど、わりと話では聞いてるからなんとも……
「これが彼氏さん…?」
話だけで、実は今まで写真を見たことがなかった。
「いやあほんとに可愛くて困るの、年上だよもう成人してるんだよ、なにこの可愛いの」
………ついこの間 浮気だ!なんて言って騒いでいた奴だとは思えない。
「仲直り、した?」そう聞くと 何が?と言いたそうな顔で見てくるそいつ 少しは心配してやってたのに……。少し考えた様子を見せて「ああ!」と言いながら手をパチンと叩いた。
「あれね、ハムスターだった」
「…ハムスター」
「回し車で走ってる姿が可愛いんだって!」
「…よかったな…?」
そんなとこだろうと思っていたし、多分光の彼氏は光の反応が可愛くてわざとしているんだろう。さっき聞いたけれど昨日早く帰ったのはやっぱり彼氏に会いに行ったからで、予想通り走って見せたらしい。
「仲良いのはいいことだ、もうこれで浮気だって騒ぐことはないな」
「おう!女の子みたいな名前つけるなって念押してきた~食べ物の名前しか許さん!って!」
ちょっとよくわからないけどヨシヨシと頭を撫でてやる、光が 落ち着かない とでも言うようにチラチラとどこかを見ているけれど何がそんなに気になるのか、こんなこといつもしているのに。
「ひ、ひかりちゃん!」
「あ~あいちゃん!」
あいちゃん?そんな子クラスにいたっけ、と思ってスマホをみていた顔をあげると口をへの字に結んだ高野がいた。
「あいちゃん…なのか?」
「ああ!指田は知らないか、うちの学年高野って二人いるの、二人とも去年同じクラスだったんだけど、先生が高野あい!て呼んでて…!」
「ほんとやめて!今あいちゃんって呼んでんのひかりちゃんくらいなんだけど…
てかそうじゃない!」
そう言うと高野は光の腕を掴んで教室を出ていった。
なんか、不機嫌だったなあ、そう思いながら俺は二人の後ろ姿を見送った。
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