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第9話
光を連れて出ていった高野は、授業が始まっても帰ってこなくて気づいたら授業の半分が過ぎかけていた
「何しに行ったんだろう」「光と高野って仲良かったんだ」色んな疑問が浮かんでは消えを繰り返していたとき
「セーフ!」
バンッと凄い音を立てて扉が開けられた。それと同時に聞こえてきたのは先程まで自分の頭の中でぐるぐるしていた疑問の主、高野愛翔だった。
「愛翔何してたの~」というクラスの女子の声に「ひかりちゃんと内緒の話~!」とヘラヘラしながら自分の席へとつこうとしていた
その時
「おい高野、入室許可証」
「うわバレた」
そりゃバレるだろう、こっそりでもなく半分近く授業はもう終わっているんだから。
高野が入ってきたのをきっかけにクラスの全体がコソコソと話しはじめていたのが、コソコソが段々とザワザワと聞こえるまでに大きくなっていた。
俺は遅れていた板書の写しを黙々としながら、今から取りに行くんだろうか、これなら授業遅刻じゃなくて欠席扱いだなとか考えてチラッとその元凶(?)に目線をうつしてみると「嘘だよ~あるもん!」と入室許可証をヒラヒラとさせていたそいつと目があった。
出ていったときよりニコニコしてるような気がする……
***
「指田~~、帰ろ!」
いつものように光が教室に迎えにきた
ちょっと待って、と言いながら席を立ち鞄を持ち上げて光の方へ歩こうとしたら
「指田くん!」と呼び止められた
声の方を振り返ると高野がいて「今日、LINEするから」と言いながら近づいてきて封筒を一つ手渡してきた
「これ、こないだ撮らせてもらったときの。気に入ったのプリントしたんだ、だから貰って!」
自分の写真を貰ってもとは思いつつ ありがとう と受け取って、待たせてしまっている光の元へ急いだ。そのときにはもう高野はまた友人の輪に戻っていた。
下足ロッカーのところで封筒を鞄になおそうとしたときに光がからかうように 何それ何それ!ラブレター? と封筒を取り上げてきた
「おい!」と取り返そうとするも 今どきラブレターなんて粋だな~!と楽しそうに開こうとしている。
「ラブレターじゃないし、俺もまだ見てないんだから返してよ」
「えーやだ!…うわあ」
これ指田?と中に入っていた写真を向けられたので見てみると夕陽に照らされた俺の横顔が写るものだった。
後ろにぼんやりと写る黒板のラインや窓枠の直線が丁度良いアクセントになりつつ赤やオレンジと黒の面積やコントラストの具合が絶妙で「この時間が!」と拘っていた理由が少しわかった。
「あ、この字あいちゃんだ」
写真の裏をみながら なるほど という顔をしてそう言う光。字でわかるくらい仲良いのか、ちょっと高野に妬けてしまう。
「でも珍しいな」不思議そうにそう言う光に 何が?と聞いてみる
「あいちゃんさ、滅多に人を被写体に選ばないんだよ。人以外はほんと何でも撮るのに…」
「へえ…でもどうせ撮るなら俺みたいなのじゃなくて、うん、光とかに頼む方が良さそう」
だなって、と続けると「ほんっっとバカだろ!」急に罵倒された。結構びっくりしたし結構ショック。
でもこれは本心だ。さっきの写真だって俺より光の方が絵になっただろうなと思う。
「わからないの、これは!」
あーー……と大きな溜め息をついて変な顔をしている光。「てかどっちもバカ」なんて言っている、短時間で親友に二回も罵倒されるなんて………
「あいちゃんが今一番撮りたいのは、他でもない指田なんだから、それでいいんだよ」
「お、おう……?」
また変な顔をしている、むしろ顔にこいつはバカだ と書いてある。
封筒と写真を押し付けて「帰ろ!」と言い先に歩いて行ってしまった後を追うように門を出た
そこからは家につくまで光のノロケを聞くいつもの時間が始まった。
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