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第13話

彼は無理矢理に犯されているにも関わらず気持ち良さそうに声をあげていた。 それが自衛のためだとはわかっていた どんなに気持ち良く啼いた後でも彼は自室に戻ると人知れず涙を流していた だがそれから更に時がたち何もかも全てを放棄したのか涙さえ見せなくなった ただ毎晩月を見上げては息をはいていた あぁ…何かしてやりたい… 始めは薬草をくれたから礼がしたかっただけ。 あの時の笑顔が見たかっただけ… でも次第に彼が気になり彼を俺の元へおきたい…俺ならばそんな顔させないのに…そう思い谷から朔を見つめ続けた それが恋い焦がれると言うことなのだと世話人の狼獣人が言っていた それに気付いたとはいえ今の俺にはどうすることもできない… 何故こんなにも力が足りないのだろう…力さえあればすぐにでも救い出せるのに… こんなにも愛しい人をただ見てるしか出来ないなんて…無力だ… 何故私は理不尽な罰を受けねばならなかったのだろう… あの女が憎い…憎くてたまらない…こんなドロドロした感情は誰にも知られたくはない… きつく拳を結ぶ 紅い月の夜。今夜も朔は体を拓かれていた あぁ…どうか…彼をお救いください… ふと光が差し込む 「よぉイザヤ。久しぶりだな」 「お前は…ミカ…」 「どうした?そんなしけた面…まぁしょうがないか…」 数少ない真実を知る者の一人で幼い頃から側で暮らしていた 「ごめん…あの時俺に力があれば…」 「もう…済んだこと…今さら真実がわかっても何も変わらない…見廻りか?」 「あぁ。相変わらずここは平和だな。天界の方が乱れているよ」 「そうか…あの女は?」 「お前に良く似た息子を溺愛しているよ。とても可愛がっている」 「そうか…」 「彼女が憎いか?」 「憎いさ…本当に愛する人を見つけたのに…助けてやれない…」 「こいつか?」 「あぁ…」 「お前さっき月に願っただろ?俺が叶えてやる」 鋭い閃光が俺を貫いた 「救える力だ…ただし…一人しか救えない…俺にはこれが精一杯だ…後は…あいつが願うように囁いてやるだけ…」 両手を合わせ目を閉じたミカを見守る 「よしっ」 「ミカ。ありがとう」 「願ってくれるといいな…お前には幸せになって欲しい…もういいだろ…これだけ苦しんだんだから。んじゃ魔界行ってくるわ」 「ん。気を付けて」

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