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第2話
ゆっくり歩いて半日。
宿舎から塔までは、割と険しい道が続く。
荷物を持っての山登りは、嫌いではないけれど苦手だ。
厨房からの心づくしは籠に入っているから走るわけにはいかない。
背負っていれば走ることもできるけれど。
ひっくり返さないように気を付けながら、速足で歩く。
気持ちが浮足立ってくる。
やっと、師匠のもとに帰れる。
宿舎のゆったりとした寝台も、厨房からすぐに届けられる温かい食事も、たっぷりとして手足を伸ばしてつかれる風呂も、とてもいい。
人の気配も嫌いではないけれど。
けれど、オレの心はあの人のもとにある。
息が切れるまで一気に歩くと少しだけ見晴らしのいい場所にでる。
今でてきた宿舎は眼下に。
その向こうには突き抜けて高い塔が見える。
あれは月の塔。
転じて西を向けば、堅固な要塞にも見える塔。
あれは歴の塔。
ここからは見えにくいが、東を向けば学舎がある。
オレの向かう日の塔は、もう少し森を抜けた先。
月の塔と対になるように作られた、背の高い塔。
深い森と中に点在する高い塔、これが、オレの住む場所。
世界の移り変わりを記録し続ける、賢者の森。
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