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第3話

歴の塔と学舎、宿舎の距離はそれほど離れていない。 けれど月の塔と日の塔は、少し離れた高台にある。 学舎は、子供たちが勉強をしに来るところ。 歴の塔は、世界の中で起こったことをすべて記録しているところ。 そして、月の塔は夜の天空を観察して記録するところ。 日の塔は、陽と天候と農作物と木々の様子を観察して記録するところ。 他の塔で生活する煙や温度が少しでも影響しないように、月と日の塔は離れた場所に先人たちが建てた、と聞いた。 森の外にも世界は広がっている。 ごく普通の村や町や、王宮があって、別の国もあるのだと、師匠は古い本を眺めながら言っていた。 けれど森に捨てられていて、宿舎で育ち、日の塔に通うようになったオレは、他を知らない。 知ろうとも思わない。 外を否定しているんじゃない。 ここでの生活が満たされているから。 今、怖いことといえば、師匠の 「外の世界を見てきなさい」 という一言だ。 この言葉が出ないことを、オレは本気で願っている。

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