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第4話
しばらく歩き続けて、ちょうど日が真上に差し掛かった頃、塔につく。
森の切れ目の斜面を登り、ぐるりと塔を回り込んだ。
「ただいま」
「やあ、千草おかえり」
干していた寝具を取り込みながら、潤(うるみ)が迎えてくれた。
潤はオレより少しだけ年上。
オレともうひとりと、三人交代で塔の仕事を手伝っている。
「師匠は?」
「いつものところに。千草と入れ違いですぐに宿舎へ行っていいって言われているから、行くよ」
「うん、気を付けて」
「前回の食料の残りは置いていく。洗濯は持っていくね。二人だからって適当に過ごしちゃダメだよ」
優しい潤は師匠のことだけじゃなく、オレのことにまで気を配ってくれる。
食事のこと、掃除洗濯のこと、健康のこと。
ともすれば、宿舎に食料を取りに行くことだって、師匠とオレとじゃ忘れてしまいかねない。
「わかってる」
「僕が言っているのは、生活のことだよ。二人とも仕事に没頭しすぎる」
眉をひそめながら綴られる言葉は、割と予想通りのこと。
「……師匠と同じには、あんまりされたくない」
師匠は大好きだけど。
オレの全てだといっていいくらい、大好きだけど。
こと、生活全般においては、あんまり一括りにされたくないっていうのが、正直なところ。
「あんまり変わらないよ」
くすくす笑いをこぼしながら、潤がてきぱきと荷物をまとめて、ぽんぽん、とオレの肩を叩く。
「じゃあ、あとは頼んだよ」
「ああ、気をつけて」
潤を見送りしながらも、心は早る。
あの人のところへ、行きたいって。
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