6 / 7
第6話
仕方のない人だなぁと思う。
仕事が大好きで、気まぐれで、好きなことしかしなくて、真面目で、でも生活能力と決断力のない人。
塔の責任者としては、誰からも憧れの眼差しを受ける人なのに。
個人のこの人ときたらどうだ。
師匠がこんな態度に出る月白さまからの手紙の内容なんて、すぐに推察できる。
『日の塔の後継者はどうなっているんだ』
この一言につきるだろう。
日の塔と月の塔。
どちらがかけても、この国の気象事象は記録、解析しきれない。
月の塔には後継者がいる。
責任者は同じ歳なのに――見た目が若くても、オレは知ってる。師匠は月白さまと同じ歳だ――こちらは決まっていない。
この危うさ。
「いい加減、決めたらどうです?」
黒点を描きながら、告げた。
オレは、師匠に対するオレの言葉の重さを、ちゃんと知ってるつもりだ。
師匠が迷っているのも、知ってる。
「――わがままを、言っていいかい?」
後ろからオレの腰に抱きついて、師匠が言った。
「師匠がわがままじゃなかったことなんて、ないと思いますよ」
「お前は意地悪だね」
「それでもあなたが良くて、あなたしか見えなくて、あなたのそばにいるオレの気持ちを、汲んで欲しいです」
わがままなんて、今更だ。
「じゃあ、これからも私のそばにいなさい」
「はい」
「日の塔ではないよ。私のそばだよ」
「はい」
「私がいなくなったら、お前の扱いや立場はとても微妙になるよ」
「はい」
「お前、本当にわかってるかい?」
ともだちにシェアしよう!