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第6話

仕方のない人だなぁと思う。 仕事が大好きで、気まぐれで、好きなことしかしなくて、真面目で、でも生活能力と決断力のない人。 塔の責任者としては、誰からも憧れの眼差しを受ける人なのに。 個人のこの人ときたらどうだ。 師匠がこんな態度に出る月白さまからの手紙の内容なんて、すぐに推察できる。 『日の塔の後継者はどうなっているんだ』 この一言につきるだろう。 日の塔と月の塔。 どちらがかけても、この国の気象事象は記録、解析しきれない。 月の塔には後継者がいる。 責任者は同じ歳なのに――見た目が若くても、オレは知ってる。師匠は月白さまと同じ歳だ――こちらは決まっていない。 この危うさ。 「いい加減、決めたらどうです?」 黒点を描きながら、告げた。 オレは、師匠に対するオレの言葉の重さを、ちゃんと知ってるつもりだ。 師匠が迷っているのも、知ってる。 「――わがままを、言っていいかい?」 後ろからオレの腰に抱きついて、師匠が言った。 「師匠がわがままじゃなかったことなんて、ないと思いますよ」 「お前は意地悪だね」 「それでもあなたが良くて、あなたしか見えなくて、あなたのそばにいるオレの気持ちを、汲んで欲しいです」 わがままなんて、今更だ。 「じゃあ、これからも私のそばにいなさい」 「はい」 「日の塔ではないよ。私のそばだよ」 「はい」 「私がいなくなったら、お前の扱いや立場はとても微妙になるよ」 「はい」 「お前、本当にわかってるかい?」

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