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第6話

 宇佐野浜高校は一、二年とクラス替えがなく、二年生の終わりに修学旅行へ行くのだが、そのときまでにもっときたえて、秋斗をびっくりさせたいと密かな野望を抱いている。  今までに一緒にプールや海へ遊びに行ったときは、まだ貧弱な体をさらしていたから、マッチョ……はどう考えても無理そうだけど、小マッチョくらいにはなんとかなりたい。 『秋斗、僕、脱いだらすごいんだよ』  なんて言っちゃって、僕の綺麗な筋肉に惚れ惚れさせちゃうんだ……。 「おい、白兎、なにニヤニヤしてるんだ?」  友悟は理想の自分を思い浮かべて、つい顔が緩んでしまっていたようだ。 「……に、にやにやなんかしてないよ」 「してたよ。ニンジンのことでも考えてた? 白兎はうさぎだからな」  秋斗は笑いながら白兎の額を軽くつつく。  その場にいるクラスメートたちがクスクス笑っている。 「秋斗、人のこと、うさぎうさぎって言うなよ。だいたい、僕がニンジン嫌いなこと秋斗知ってるくせに」 「うさぎのくせに、ニンジン嫌いだなんてな」 「あ、またうさぎって言ったー」  友悟と秋斗が言い合っていると、女子生徒の一人が二人のあいだに割り込んできた。 「でも、確かに稲葉くんって、うさぎさんぽいよねー。あたしもこれから稲葉くんのこと、白兎くんって呼んじゃおっかなー」  とんでもない、と友悟は思った。  白兎というあだ名も、うさぎうさぎとからかわれるのも、秋斗だから許せるのであって、他の誰にもそんなふうには言われたくない。

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