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第8話
その夜、友悟が自宅の自分の部屋で宿題をしていると、いつの間にか雨が降っていた。
友悟はノートから顔を上げ、机の上に置かれている時計を見た。
十時を少し回ったところだ。
勉強机から立ち上がると、友悟は窓の傍へ行き、カーテンをめくった。
ガラスの窓の向こうでは、降りしきる雨粒が、小さな庭の木々や、隣の家の屋根を濡らしている。
いつから降っていたんだろう? 雨。
お昼休みには今にも振り出しそうだったけれど、あれから天気は快方に向かって、下校時には雲の合間から青空がのぞいていた。
だが、夜になってまた、ぐずついたようだ。
友悟は小さく溜息を落とすと、冷たい窓ガラスにコツンと額をくっつける。
秋斗が昼休みに言ったおまじないを思い出していた。
友悟は特におまじないや占いといったものを信じているわけでも、興味があるわけでもない。
ただ、友悟にとってそれが重大な意味を持つのは、秋斗の口から語られたおまじないだからだ。
ふと試してみたいという気持ちが芽生える。
僕は秋斗が好きだ……、本当に。
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