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第10話

 ああ、そういえば自慰を覚えてからも、僕の対象は多分、他のみんなとは違ってたんだろうな……。  エッチな話を友人とするということ自体が苦手な友悟は、他の友人たちがどんなものを想像、あるいは見ながら自慰をするのかは、はっきり分からない。  だが、おおよその見当はつく。  女性の裸だったり、エッチな本やDVDだったりするのだろう。  友悟は女性の裸やきわどい姿を見て、欲情することはなかった。  友悟が夢想するのは、『されている自分』だった。  例えば深夜の映画などで、セックスシーンがあったとする。  そしたら友悟は、その男女の絡みの女性に自分を置きかえてしまうのだ。  かっこいい男性にキスをされて、体を愛撫されている自分。  女性になりたいというわけでは決してない。  自分は自分のままで、かっこいい男性に抱かれる。そういう姿を想像すると体が熱くなり、欲情を覚えていた。  少し考えてみれば、充分普通でないことが分かりそうなものだが、知識そのものが豊富ではなかったし、もともと性欲は淡白な質だったので、悩まず、変だと自覚することもなく、過ごしてきた。  けれど、秋斗と出会って恋をして、現在進行形で好きになり続けている自分と向かい合っている今、自分がゲイだと認めざるを得なかった。  ……今まで誰かを真剣に好きになったことはなかったんだよな、僕は。女性は勿論、男性も。  だから、僕の初恋の相手は、秋斗……。

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