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第14話
しかし、このおまじないは実際に実行にうつしてみると、とても難しいことに気づかされた。
まずだいいちに、雨が降り始める瞬間に外にいるという確率が低いのだ。
大抵は屋内にいて、気づけば雨が降っていたというパターンだ。
それでもなんとか曇天の下で雨が降り出すのを待つ機会を作っても、最初の一滴を感じるのは、額や頬。鼻のてっぺんにピンポイントで当たるということはない。
まあ絶対的面積が小さいのだから、当たり前と言えば当たり前なのだが。
でも友悟はあきらめずに、おまじないに挑戦し続けている。
半分は意地で。
残りの半分は、こんなに難しいことに成功すれば、恋が叶うまではいかなくても、なにか秋斗とのことで、いいことがあるのではないかという、自分でも健気さを覚える希望ゆえに。
十月が過ぎ去り、十一月に入ったばかりのその日、友悟は日直に当たっていた。
三時間目の化学の実験の後片付けを、女子の日直とともに終えてから、友悟は四時間目の体育の授業の着替えをするため、更衣室へと向かった。
片付けにけっこう時間がかかってしまったため、更衣室に付いたときには、もう休み時間は残り少なくなっていた。
すでに体操着に着替えた生徒たちが、ぞろぞろと更衣室から出てくる。
その波に逆らうように、友悟が更衣室へ入ろうとしたとき、出入り口のところでちょうど着替えを終えて出てくる秋斗とすれ違った。
秋斗が友悟の頭をポンポンと軽くたたく。
「白兎、早く着替えなきゃ、遅刻してワタナベに走らされるぞ」
「あ、うんっ」
友悟は少々焦りながら、返事をした。
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