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第16話

「わっ!?」  驚きのあまり声が裏返ってしまう。 「よお、稲葉、生着替え中かよ?」  背後から聞こえてきた品のない声に、友悟の体は一瞬にして竦んだ。  後ろから抱きついているのは、同じクラスの増月(ますづき)ノリオ、札付きのワルである。  腰ぎんちゃくの小物のワル二人を引き連れている。 「は、離せよっ……!」  嫌悪感に、体をよじって増月から逃れようとするが、友悟を抱きすくめている太い腕は執拗に絡みつき、胸元を触り始めた。 「お? 稲葉、おまえ胸、あんじゃね?」  からかうように言い、友悟の薄い胸を遠慮なく撫でまわす。  じっとりと湿った手が気持ち悪くて、吐き気がした。 「やめろってばっ!」 「いやいや、マジなんか胸柔らけーぞー。おまえ本当は女なんじゃねーの? 顔も女みたいだしよぉ」  増月の下卑た笑い声。  友悟はくやしくて唇を噛みしめる。  これはジム通いできたえた成果の胸筋だ。  確かにボクサーみたいな固い筋肉ではないけれども、ジム通いを始める前は、それこそガリガリペラペラで、あばらが浮いているという貧弱さだったのだ。  ようやく少し筋肉がついてきたと喜んでいたのに、女のようだと言われて、ショックだったし、腹が立ってたまらなかった。  友悟の、ほとんど歩かないか分からないような膨らみを、増月に両手で揉むようにされ、あまりの不快さに、怖気が走る。 「離せって言ってるだろっ!!」  強い拒絶の言葉とともに増月の体を突き飛ばそうとするが、プロレスラーのような巨体はビクともしない。  そのうえ、いつの間にか二人の腰ぎんちゃくが友悟の逃げ場をふさぐように立っている。

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