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第28話
友悟の戸惑いをまとった問いかけに、秋斗は少し困ったような苦笑を浮かべ、言う。
「なんでって……、増月たちが途中で待ち伏せしているかもしれないだろ?」
「……あ」
どう答を返したらいいのか分からなかった。
確かに増月たちが更衣室でのことを根に持っている可能性は高い。
仕返しをするのなら、友悟が一人になったときを狙ってくるだろう。
そう考えると、恐怖と嫌悪感がよみがえってくる。
でもだからといって、家まで送ってもらうというのは……、本音を言えばうれしい。
うれしいけれど、それって高校二年の男としてかなり情けなくないか? か弱い女の子じゃあるまいし。
しかし、友悟が躊躇っているあいだにも、秋斗はどんどん先に歩いて行ってしまう。
「あっ……、ちょっと待ってよ、秋斗っ」
男としてのプライドは横に置いといて、友悟は思い人のあとを追いかけた。
好きな人と並んで家路につく。
なんだかんだいっても、やはり秋斗と肩と肩が触れ合う距離で歩くひとときは、とても愛おしい。
「そういえばオレ、友悟の家へ行くのって初めてだな」
秋斗がそんなことを呟いた。
「うん。僕も秋斗の家って行ったことないよ、そういえば」
「しょっちゅう二人で遊びに行ってるのにな」
「うん……」
仲良くなって一年半以上が経つのに、お互いの家へ遊びに行ったことはなかった。
「いつも学校から直で遊びに行っちゃうからな」
そう駅前の繁華街に行くにしても、電車に乗って都心に出かけるにしても、いったん家へ帰ってからまた出てくるというのは面倒なのだ。
休日にしたって同じだ。
駅で待ち合わせて、それから遊びに繰り出す。
二人のうちのどちらかが一人暮らしでもしていれば、また話は違っていたのかもしれないけれども。
そんなことを頭の片隅でぼんやりと考えていたとき、ふと友悟は気づいた。
秋斗の歩く速度が若干、本当に心持ち程度だが、自分よりも早いことに。
「……ね、秋斗、僕の自宅への道、知ってるの?」
「えっ?」
瞬間、秋斗が狼狽えたような表情をしたみたいに見えたのは、気のせいだろうか。
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