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第31話

「うんうん。分かる―。僕もしろうさぎが泣いてる場面はかわいそうで苦手だったんだよね、実は。なんかいい話聞いちゃった。でも初めて聞くお話だな。お祖父さんってそういうのに詳しいの?」  友悟が聞くと、秋斗は苦笑を浮かべた。 「祖父ちゃんの話のソースはラジオだったらしいんだ。オレとしては祖父ちゃんの話してくれたほうを信じているけど……」 「けど?」  秋斗の言葉の切れが悪かったので、重ねて聞く。 「いや、オレ、祖父ちゃんから新しいほうの話を聞くまでは、因幡のしろうさぎでぎゃん泣きしてたらしくて。だからもしかして、オレを泣かさないようにするためだったのかなとかも思ったりして。今でもどっちが本当なのか分からない」 「ふふー」 「なんだよ?」 「秋斗にもお話を読んでもらって、わんわん泣いてた頃があったんだなーって」  幼い頃の彼を想像すると、なんだか微笑ましい。 「だって、なんだか秋斗って、子供の頃から既にかっこよかったようなイメージがあったから。でもかわいかったんだねー」  友悟の言葉に、秋斗はわざと大げさに顔をしかめた。 「白兎には『かわいい』って言われたくない」 「えー、なんでだよ」 「あら、友くん」  そのとき、女性の声が彼らの会話に割り込んだ。 「あ……母さん」  声の主は友悟の母親だった。買い物帰りらしく、スーパーの袋を持っている。  気づけば自宅はもう目の前だった。

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