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第33話

 母親はそのまま居座り、秋斗のことを褒めまくっては見惚れている。  友悟が強引に追い立てると、ものすごく名残惜しそうな顔で、「ごゆっくり」と言って、部屋から出て行った。  ようやくうるさい母親が出て行ってくれて、友悟はホッとした。  だが、それも束の間、今度は狭い部屋に好きな人と二人きりでいるという緊張感がやって来る。 「あ、秋斗、シュ、シュークリーム食べて。ここのすごくおいしいから」  ドキドキと痛いくらいに主張する胸の鼓動をなだめつつ、彼にシュークリームを勧めた。 「うん。サンキュ」    ここのシュークリームは、シュー生地を二つに切って、そのあいだにたっぷりのカスタードクリームとホイップクリームが入っていて、シュガーパウダーもたっぷりかかっているので、とてもおいしいのだが、少々食べ方に気を遣う。  秋斗は器用にフォークを操って、シュークリームを優雅に口に運んでいる。  ……なんか秋斗って、こんなふうにお菓子を食べている姿も洗練されているっていうか、絵になるんだよね……。  またもや友悟は秋斗に見惚れてしまう。 「白兎? シュークリームの砂糖が零れてるぞ」 「えっ? あ、うん」 「またボーッとしてたんだろ」  からかうような瞳で見てくる秋斗。 「そ、そんなことないよ。シュークリームがおいしいから、じっくり味わっていただけ」  まさか『秋斗に見惚れてた』とは言えない。

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