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第38話
秋斗は自分のペースをしっかりと分かっているようで、二週目になっても三周目になってもスピードが落ちることなく走り続ける。
友悟はいつも以上に心臓が激しい鼓動を打っていたが、苦しさはほとんどなかった。
こういうのをランナーズハイっていうのかな?
秋のひんやりとした空気を体にまといつかせながら、そんなことを思う。
そして、ゴールまであと残り少しとなったところで、秋斗はラストスパートに入った。
走るスピードがグンと速くなり、友悟の手首をつかむ彼の手にも力が込められる。
二人はダントツトップでゴールを駆け抜けた。
「……秋斗っ」
友悟はそのまま秋斗の胸へと倒れこむ。
「おつかれ、白兎」
秋斗が強くハグしてくれた。
風と一体になったかのように颯爽と走ることができたのも、トップでゴールできたのも、友悟にとっては生まれて初めてのことだ。
もちろんそれは秋斗が手を引き、リードしてくれたからだが、その初めての経験は本当に気持ちよかった。マラソンというものに苦手意識を持つことさえ、なくなりそうなほどに。
秋斗が友悟の背中を、赤ん坊をあやすようにポンポンとやさしくたたいてくれている。
彼の腕に抱きこまれ、呼吸が整ってくるのと待ちながら、友悟は本当に本当に秋斗が好きだと改めて思った。
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