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第40話
秋斗の言った通り、彼の自宅までの道のりは、方向音痴を自認する友悟でも迷うことはないだろうと思うほど簡単だった。
突きあたりを右に曲がってしばらく歩くと、秋斗は一軒の二階建ての前で足をとめた。
「ここがオレの家。周りも似たような家ばかりだろ?」
確かに同じようなデザインの家が並んでいるが、小さな庭や門などに、各々の家庭の主張が垣間見えるのが楽しい。
秋斗の家は色とりどりの花が咲き誇るプランターが並べられ、門柱の上に子猫の置物が置いてあった。
秋斗は制服のズボンのポケットから鍵を取り出し、扉を開けると、友悟を中へ促した。
「入って。白兎」
「あ、うん。お、お邪魔します」
初めての好きな人の家。友悟の胸が高鳴る。
「母さん、ただいまー」
秋斗が家の奥へと声をかけると、パタパタとスリッパの軽い音が聞こえてきた。
「おかえりなさい。……あら、お友達?」
秋斗の母親を一目見た瞬間、友悟は秋斗は母親似だなと思った。
彼の母親はスラリとしたモデルのような美人だった。
かわいいというより、かっこいいというイメージ。もしも女子高なんかだったら、絶対に全生徒の憧れの的だろう。
男性の目から見れば、綺麗すぎて高嶺の花というふうに映るかもしれない。
「うん。稲葉友悟。オレは白兎って呼んでるけど」
「ああ、しろうさぎちゃんね」
秋斗の母親は楽しそうに笑う。
「秋斗からよく話は聞いてるわ。そんなところで立ってないで、上がってちょうだい」
ほけらっと間抜けな顔をさらして、美形の親子を見つめていた友悟に母親がスリッパを出してくれた。
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