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第42話
「うわー」
友悟は感嘆の声をあげた。
クローゼットは三段になっていて、一番下の段にはカラーボックスが並び、二段目には小説、三段目にはCDとDVDがずらりと並んでいる。
小説とDVDはほとんどがミステリかホラーだ。
「白兎もミステリとホラー好きだったよな? 読んでないやつとか観てないやつあったら持って帰れよ」
「ありがとー」
友悟が小説の背表紙を指でたどっているあいだに、秋斗はどこからか折り畳み式のミニテーブルとクッションを持ってきた。
そしてノックの音とともに彼の母親の声。
「秋斗―、コーヒー入れてきたから、開けるわよ」
秋斗の母親は、ミニテーブルの上にコーヒーとランチクロスのかけられたお菓子を置くと、
「ゆっくりしていってね、しろうさぎちゃん」
輝くような笑みでそう言い、部屋を出て行った。
「白兎、こっち座れよ」
「あ、う、うん……」
部屋を観察することに気持ちを持って行かれていたが、好きな人の部屋に二人きりでいるということがまたもや強く心に迫って来た。
そうなんだ……。ここは秋斗の部屋……。
秋斗が勉強したり、小説を読んでくつろいだり、眠ったり……。
彼のいい香りがふわりと漂う部屋……。
「白兎、どうした? 急に顔、赤くして」
「えっ? そ、そう? べ、別になんでも。……あ、コ、コーヒーいい匂いだね」
恥ずかしさに声が上ずってしまう。
「ああ。冷めないうちに飲もうぜ。こっちはお菓子かな?」
秋斗はそう言うとランチクロスを取り去った。
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