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第44話

「ち、違うよ。僕が言ったんじゃないんだからねっ。お母さんが言ったんだよ。『マカロンはプリンセスが食べるお菓子よ』って」 「うーん。上品な味っていうことか? まあ確かにね。……でもかわいいな、白兎のお母さんも白兎も」 「お母さんは秋斗の大ファンだからね。秋斗に『かわいい』とか言われたら喜ぶと思うけどさー」  友悟はやはり複雑な気持ちだ。  一応褒め言葉ではあるのだが、男としてのなけなしのプライドが傷つくような……。  そのとき秋斗が不意になにかを思いついたような顔をし、クローゼットの一つを開けた。  中をごぞごそあさっていたかと思うと、やにわに友悟のほうを振り返った。  次の瞬間、カシャッとシャッター音が響く。 「えっ?」  見ると、秋斗がインスタントカメラ――チェキというやつだろうか――を構えて微笑んでいた。 「ちょっ……、今、撮ったのっ?」 「ああ。なかなかいいシャッターチャンスだったから」 「えー」  そんなはずない。  思い切り間抜けな顔をして、マカロンにかぶりついていたはずだ。  だが、スマートホンなどで撮ったものとは違い、もちろん削除などできなくて。

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