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第50話

 けれども、宏はやけ食い気味にパンを頬張りつつぼやき続ける。 「いんや。さすがの秋斗も美菜ちゃんだったら落ちるだろ。だって超かわいいうえに、超スタイルがよくって、胸も大きいし。オレだったら、彼女がいたとしても美菜ちゃんに乗り換えるぞっ」 「いやいや、宏。おまえ、それはちょっと最低男すぎるだろ」  他の友人たちが苦笑する。  友悟もせめて表面上だけでも笑おうと試みたが、うまくいかなかった。秋斗と美菜のツーショットが脳裏にこびりついてしまっていて。  すごくお似合いだった、秋斗と加納さん。二人並んで立っているととても絵になって、まるでテレビの恋愛ドラマから抜け出てきたみたいで……。  友悟は美菜とは言葉を交わしたことがないから、彼女がどんな性格の女の子なのかは知らない。  でも美菜は目立つし、隣のクラスということもあって、明るい少女だということだけは察することができる。  秋斗の口から美菜の名前が出たことはないので、今の時点では彼は彼女に対して特別な感情を持ってはいないと思う。  ……でも、もしかしたら口に出していないだけで秋斗が加納さんに好意を持っていても不思議じゃないし、今は何とも思っていなくてもこれからは分からない。  秋斗はもてる。  バレンタインデーには明らかな本気チョコをたくさんもらっていたし、誕生日のプレゼントも山ほどだった。  友悟が知らないだけで、愛の告白もいっぱいされているのだろう。  少なくとも今までの女の子たちは秋斗の関心を引くことはなかったわけだ。  けれど宏の言う通り、美菜ほどの美少女だったら、彼も惹かれるかもしれない。    

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