52 / 87
第52話
肩を落としてトボトボと廊下を歩く。
早くもホームルームを終えた生徒たちが、部活動に向かったり、帰りに寄り道する遊び場所について相談しながら歩いていくのにすれ違う。
そんな生徒たちの会話の一つが友悟の耳に飛び込んできた。
「げー、今にも雨降りそう。オレ傘持ってきてねーよー。おまえは?」
「オレも持ってきてねーよ。だって朝はめっちゃいい天気だったしさー。なに? もう降ってんの?」
「いや、まだ降ってねーけど、これは時間の問題だわ」
彼らの会話に、友悟は窓の外を見た。
確かに昼休みに見たときよりも暗く厚い雲が垂れ込めている。いつ大粒の雨が降り出してもおかしくない空模様だ。
……これなら、おまじないに挑戦できる。
そんなことを考えたのは、辛すぎる心境からの逃げだったのかもしれない。
友悟は校舎の北の裏庭に来た。
この場所は周りを校舎に囲まれて、よく晴れている日でもお日様が届かない。そのためいつもジメジメ湿気が多く、ひと気がなかった。
こっそりとおまじないに挑戦するにはもってこいの場所である。
どんよりと暗い曇り空は今にも泣きだしそうで、友悟の気持ちそのものだった。
どれくらいのあいだ、ぼんやりと空を見上げていただろうか。
ぽつん。
不意に鼻のてっぺんに一滴に水滴が当たった。
……え?
水滴は、次に頬に当たり、それから額に当たる。
今のって……!
空がとうとう泣き出した。
雨は次から次へと落ちてきて、あっという間にどしゃ降りになった。
ともだちにシェアしよう!