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第59話
ゆっくりと湯船につかってから、たくさん服を着こんで、秋斗と母親がいるリビングへ戻る。
母親から渡されたホットミルクを飲んでも友悟の寒気はおさまらなかった。
どうやら本格的に風邪を引いてしまったようだ。
母親は息子の額に手を当てると、
「……やっぱり熱があるみたいね」
心配そうに顔を曇らせた。
救急箱を持ってきて、中から体温計を取り出し友悟に渡す。
「大丈夫か? 白兎」
秋斗も心配そうに顔をのぞき込んでくる。
「ん。大丈夫だよ」
ピピピッと体温計が軽い音を立てた。
「三十八度三分、あんまり大丈夫じゃないみたいね、友くん。熱、まだ高くなるわよ?」
母親が体温計を見て溜息をつく。
大抵、熱というものは夜になると高くなる。
夕方の時点で三十八度以上あるということは、下手をすれば三十九度近くか、それよりも高くなる可能性がある。
「どうする? 友くん。お医者様行こうか?」
「ううん。今から出かけるほうがしんどい」
氷枕を敷き、ソファに横になったまま友悟は答えた。
雨の音は先ほどよりも強くなっている。
かかりつけの医者はそれほど遠くはないが、それでもわざわざ出かけていく気力はなかった。
だいいちこんな雨の中を医者まで向かえば、余計に風邪がひどくなりそうだ。
父親が帰ってきていれば車を出してもらえるのだが……と、そこまで考えたところで友悟は思い出した。
「お母さん、今夜お父さんと出かけるって言ってなかった?」
「え? ……あ!」
息子の言葉に、母親はすっかり失念していたというふうに口元へ手をやる。
「そうだったわ……。お父さんと二人で親戚の法事の手伝いに行かなければいけないんだったわ。でも、こんな状態の友くんを一人おうちに置いてなんか行けないわよ、心配で。私は行くのをやめて、お父さんにだけ行ってもらうしかないわね」
困惑しきっている母親に、友悟が「一人でも大丈夫」と言おうとしたとき、それを遮るように、
「あの、オレが付き添いましょうか?」
秋斗が彼らしくないおずおずした言い方で名乗りを上げた。
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