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第61話
テーブルを挟んで向かいのソファに座っている秋斗が、心配そうな顔で友悟を見ている。
「白兎、大丈夫か? なんか顔真っ赤だけど。また熱が上がったのかな」
そう言ったかと思うとソファから立ち上がり、友悟の傍へ来た。
秋斗は自分の手を友悟の額に当てる。
彼の、細くて長い指が綺麗な大きな手は少しひんやりとしていて、ほてった肌に気持ちよかった。
「うーん……。やっぱ熱いな。なんか腹に入れてから解熱剤飲んだほうがいいよ」
テーブルの上に母親が用意していった市販の解熱剤が置かれてある。
「おかゆ食べれそうか? 白兎」
「うん……」
「よかった。じゃちょっと温めてくるから。っとその前に」
秋斗の、心臓に悪いほど端整な顔が、グンと近づいてきた。
「えっ? ななななにっ?」
一瞬、友悟は彼にキスをされるかと思ってしまい、大いに狼狽えた。
だが、秋斗はキスはしなかった。その代りに思いもかけないことをした。
「うわっ? ななな、ちょっ……! あ、秋斗っ」
友悟は頓狂な声を出してしまう。
それというのも、秋斗が友悟のことを毛布でくるみ『お姫様抱っこ』したからだ。
「ソファじゃ落ち着かないだろ? ちゃんとベッドで横にならなきゃ」
「そそそれはそうかもしれないけど。で、でも、いいって。ち、ちやんと自分の足で歩けるから……」
「こら、暴れるなよ、白兎。余計に熱が上がるし、落っことしそうだ」
「だだだから、自分で歩くって……」
男二人のこのシチュエーションはかなり恥ずかしい。いや、友悟の本音の部分ではうれしくもあるのだが、それでも恥ずかしさのほうが先に立つのだ。
結局はそのまま秋斗王子に『お姫様抱っこ』されて、友悟は二階の自室のベッドへと運ばれてしまった。
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