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第62話
ベッドに降ろされたとき、秋斗の存在をすぐ近くで感じ、不意に以前の保健室での行為がフラッシュバックした。
いつもより大人っぽくて、色っぽかった秋斗。
やさしく体を撫でる指先。
柔らかな唇が重ねられる感触。
ふわりと香ったのはシャンプーだったのだろうか……。
秋斗にとっては多分、特別な意味はない行為。
でも友悟にとっては忘れることができない、あのときの行為。
友悟の恋心が切なく疼く。
だが秋斗がそれを知ることはないのだろう。
片思いの恋を持て余して揺れる友悟の気持ち。
友悟の本心を知らぬまま、秋斗は新しく氷を入れ替えた氷枕を頭の下に敷いてくれたり、布団を肩の上まできちんとかけてくれたりと、至れり尽くせりだ。
あまりにも細々と面倒を見てくれるので、友悟はつい呟いてしまった。
「秋斗って、いいお嫁さんになりそう……」
友悟の言葉に秋斗は一瞬ポカンとした顔になり、次の瞬間には思い切りふきだした。
「ありがとう。うれしい。じゃ白兎、私のことお嫁さんにしてくれる?」
「ぷっ……」
小首を傾げ、胸の前で両手を組んでふざけてみせる秋斗に友悟もまた笑ってしまう。
脳裏に、かわいいエプロンをつけて料理を作る秋斗の姿が浮かんだ。
あはは。
うん。案外かわいいかもしれない。秋斗はかっこいいけど、なんていうか『濃い男』ではまったくなくて、現代風の垢ぬけたイケメンだからきっと女装しても似合ってしまうんだ。
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