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第63話

 二人でひとしきり笑ってから、 「じゃ、ちょっとおかゆ温めてくるから。おとなしく寝てろよ、白兎」  秋斗はそう言い残して部屋を出て行った。  一人になった友悟は大きく息を吐きだした。  顔も吐息もとても熱いのは、熱のせいでもあるし秋斗のせいでもある。  見慣れた天井を見つめながら考える。  明後日まで秋斗と二人きりなんて……。  考えれば考えるほどに胸の鼓動は高鳴り、気持ちは浮つく。  友悟も分かっている。  秋斗はただ単に親友としてのやさしさで、付き添いを買って出てくれただけだということは。  それでもやはり、うれしいものはうれしい。  好きな人と二人きりで過ごせるなんて、それこそ風邪もどこかに飛んで行ってしまいそうだ。  本当にあのおまじないのご利益かも。  だって自分で言うのもなんだけど、僕は本当にがんばったもん。これくらいの幸せはあってもいいよね。   ねー、秋斗、明後日まで君を独り占めしちゃってもいいよね……?  ……美菜の存在が深く刺さったとげのように、友悟の心を苛むけれども。  今はあえて彼女のことは考えないようにして。  あたえられた幸せなひとときを大切にしたいんだ……秋斗。

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