64 / 87

第64話

 十五分くらい経った頃、秋斗がトレイを手に部屋へ戻ってきた。  トレイには友悟のためのおかゆと、秋斗用のカレーライスの大盛りが乗っている。  友悟はベッドで半身を起こし太ももの上にトレイを置いて、秋斗はミニテーブルにカレーを置いて、二人仲良くいただきますを言う。  おかゆは塩を少し入れただけのシンプルなものだったが、秋斗といっしょに食べるからだろう、とてもおいしい。  秋斗のほうは友悟の母親お手製のカレーがとても気に入った様子である。 「いつも思うんだけど、白兎のお母さんって料理上手だよな。このカレーにしたって市販のルウじゃなくって、一から作ってるんじゃないか?」 「ああ、うん。お母さん、料理には凝るタイプみたいで、なんかいろいろな調味料とかスパイスとか入れて作ってる」 「だろうな。おまえのお母さん、レストラン開いても絶対はやると思う、オレ」 「あはは。お母さんが聞いたら、舞い上がっちゃうよ」 「白兎もおばさんに料理教えてもらえよ。そしてマスターしたら、今度はオレに個人レッスンして」 「え……」  こ、個人レッスンって。  なんかちょっとヤラシイ響き……って、僕なに考えてるんだよっ。  秋斗は料理のこと言ってるだけなのに、へ、変な想像しちゃって。  恥ずかしい、もう。 「白兎? どうした? しんどい?」 「え? う、ううん。大丈夫。おかゆもおいしいし……」  刹那フッと沈黙が訪れた。  激しく降る雨の音がやたらと部屋に響く。  沈黙を破ったのは秋斗のほうだった。 「白兎、今日の放課後、どうして増月に追いかけられてたんだ?」 「えっ……?」 「おまけにあんなにびしょ濡れになってて。おまえ、ホームルームが始まる前にどっかに消えただろ? オレ、すごく探したんだからな」  秋斗の切れ長の綺麗な目が真っ直ぐに友悟を見る。

ともだちにシェアしよう!