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第64話
十五分くらい経った頃、秋斗がトレイを手に部屋へ戻ってきた。
トレイには友悟のためのおかゆと、秋斗用のカレーライスの大盛りが乗っている。
友悟はベッドで半身を起こし太ももの上にトレイを置いて、秋斗はミニテーブルにカレーを置いて、二人仲良くいただきますを言う。
おかゆは塩を少し入れただけのシンプルなものだったが、秋斗といっしょに食べるからだろう、とてもおいしい。
秋斗のほうは友悟の母親お手製のカレーがとても気に入った様子である。
「いつも思うんだけど、白兎のお母さんって料理上手だよな。このカレーにしたって市販のルウじゃなくって、一から作ってるんじゃないか?」
「ああ、うん。お母さん、料理には凝るタイプみたいで、なんかいろいろな調味料とかスパイスとか入れて作ってる」
「だろうな。おまえのお母さん、レストラン開いても絶対はやると思う、オレ」
「あはは。お母さんが聞いたら、舞い上がっちゃうよ」
「白兎もおばさんに料理教えてもらえよ。そしてマスターしたら、今度はオレに個人レッスンして」
「え……」
こ、個人レッスンって。
なんかちょっとヤラシイ響き……って、僕なに考えてるんだよっ。
秋斗は料理のこと言ってるだけなのに、へ、変な想像しちゃって。
恥ずかしい、もう。
「白兎? どうした? しんどい?」
「え? う、ううん。大丈夫。おかゆもおいしいし……」
刹那フッと沈黙が訪れた。
激しく降る雨の音がやたらと部屋に響く。
沈黙を破ったのは秋斗のほうだった。
「白兎、今日の放課後、どうして増月に追いかけられてたんだ?」
「えっ……?」
「おまけにあんなにびしょ濡れになってて。おまえ、ホームルームが始まる前にどっかに消えただろ? オレ、すごく探したんだからな」
秋斗の切れ長の綺麗な目が真っ直ぐに友悟を見る。
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