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第68話
部屋へ戻ると、友悟の小さな頭をそっと持ち上げ、新しい氷枕を敷いてやった。
予備の布団はクローゼットに入っていると友悟から聞いていたので、開けてみると確かにお客用の寝具が一式入っている。
秋斗はその中から毛布を一枚だけ借りた。
今夜は眠らずに友悟に付き添うつもりだった。
容態が心配だったし、彼の寝顔をじっくりと見つめていられる機会でもある。
部屋は程よく暖房がきいており、毛布一枚あれば寒くもなさそうだ。
ベッドの傍に座ると、ミネラルウォーターのキャップを開けて少しずつ飲みながら、熱のせいで少し早い呼吸を繰り返す友悟の顔をのぞき込んだ。
本当に綺麗だな……。
いつ見ても友悟の顔立ちは、秋斗の目をくぎ付けにする。
できたてのゆで卵の殻をむいたような白くなめらかな肌をした、小さくて愛くるしい顔立ち。
今は閉じられている瞳は、大きくて、吸い込まれてしまいそうに魅惑的だ。
高校に入学して、隣同士の席になった友悟を初めて見たとき、秋斗は、『奇跡のようなやつだな』と思った。今から思えば一目惚れに近かったのだと思う。
いつでもとても気になる存在だった。
気づけば友悟を目で追い、彼のことばかり考えていた。
白兎なんてあだ名をつけて、ことあるごとに『うさぎうさぎ』とからかうのも、友悟の気を引きたいから。小学生並みの感情表現と言われてもしかたない。
友悟のことを好きだと……それが恋愛感情だとはっきり気づいたのは、いつ頃だっただろうか。
自分の気持ちを否定したり、あるいは葛藤したりもした。
けれども恋心と言うものは、自分でコントロールできるものではなくて。
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