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第69話
二年生になる頃には、友悟に対する強い恋情を持て余すまでになっていた。
すぐ傍にいるのに手を出せないという状態は、まさしく蛇の生殺しという言葉がぴったりだ。
友悟を好きになる前の秋斗は、もちろん女性が恋愛対象だったし、好きになったら即行動に移すタイプでもあった。
それなのに友悟に対しては積極的になれない。
ずっと友達という立ち位置から踏み出せないのは、友悟が同性だからということと、彼が今時の高校生とは思えないくらい奥手だからだ。
怖がらせたくない、嫌われたくない。
人よりはるかに抜きんでた容姿に恵まれたため、秋斗はそんなふうに恋に臆病になったことなどなかった。友悟に出会うまでは。
それでも少し前に一度、どうしても我慢ができなくて、一歩どころか百歩くらい一気に踏み出したことがあった。……そう、増月たちが彼にちょっかいを出したあの日。
増月なんかが、秋斗の大切な大切な宝物である友悟の体に触れていた。許せなかった。
本当に怒りでどうなかなってしまいそうだった。
だから……。
友悟の体に自分の手で触れることで、増月の記憶を彼から完全に消してしまいたかった。
……オレの手で白兎をイカせたり、キスまでしたのは、ブレーキがきかなくなっちゃったってことなんだけどね。
でもあんなことまでしても、おまえはオレの気持ちに気づくことはなかったんだよな。
普通はあそこまでされたら、気づきそうなものなのにさ。
秋斗は友悟の寝顔を見おろしながら苦笑した。
オレはあのあとマジで大変だったんだぞ?
学校のトイレで自慰をしたのなんて、あのときが初めてだよ。しかもなかなか興奮はおさまってくれなくて。
保健室で友悟と初めてキスをして、彼の感じている表情やイクときの表情を目の当たりにしたのだ。秋斗にしてみれば、今まで抑えていた分、爆発してしまったというわけである。
でも友悟は恥ずかしがってばかりで、秋斗の気持ちを読むことはなかった。
秋斗は秋斗で、友悟を思い浮かべ何度も自慰をしたという罪悪感のような気持ちがあり、殊更なにごともなかったような態度をとる結果となってしまった。
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