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第70話

 友悟のかわいい寝顔。  その柔らかな頬を秋斗はつついた。  なあ、白兎。おまえの好きな子って誰なんだよ?  やさしげな美少女? 大人っぽい美女? それとも……。  そんなことをどれだけ考えても無駄なことは、秋斗には充分分かっている。  おまえを誰にも渡したくない、絶対に。  秋斗は友悟の寝顔に自分の顔を近づけていった。 「好きだ……、友悟」  小さく囁きながら、そっと唇を触れ合わせた。  唇を重ねるのは二度目だが、友悟の唇の柔らかさに秋斗は夢見心地になる。  男の唇とは思えないくらい柔らかな彼の唇は熱のせいか少し熱い。  愛しい人の唇を、角度を変えて何度もついばむ。  これ以上、口づけを楽しんでいると、あらぬところがスタンバイしてしまいそうになったので、秋斗は名残を惜しみつつ友悟から顔を離した。  再び友悟の寝顔を見つめながら、彼をひそかに恋い焦がれ続けた一年半以上のときを振り返る。  自分でも健気で、かなりストイックな日々を過ごしていたと思う。我ながらよく耐えていたと。  好きな人がすぐ傍にいて、でも友達のふりを続けるのは、かなりしんどいものがあった。  友悟を思い、自慰をすることさえできなかった。  なんとなく彼を裏切るような行為のような気がしたし、それ以上にそういう対象に友悟を思い浮かべることを自分に許してしまえば、どこまでも歯止めが利かなくなりそうで怖かったのだ。  あの保健室の行為のあとは、さすがにもう我慢がきかなくなって、友悟を思って自分を慰める夜も増えてしまったけれども。  それでもやはり後ろめたさは感じてしまう。  本当に友悟が相手だと、秋斗は信じられないくらいに臆病な男になる。

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