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第75話

 そして二十分後。  友悟の部屋で朝食タイムが始まった。  昨夜と同じく友悟はベッドに半身を起こして、太ももの上にトレイを乗せて。  秋斗はミニテーブルだ。  ただしメニューは、今朝は二人とも同じものだった。  少し形がいびつな目玉焼きとサラダ。バタートーストとオレンジジュース。  昨夜はおかゆしか食べていない友悟のおなかが、キュウと鳴いて空腹を主張する。 「オレ、半熟ってだめでさ。ついおまえの目玉焼きまでしっかり焼いちゃったけど、よかったかな?」 「うん。僕もきちんと中まで火が通っているのが好きだから。お父さんとお母さんは、半熟こそ目玉焼きの王道だ、なーんて言うけどね」  多分蒸し焼きにしたのだろう。秋斗の作った目玉焼きは、フォークで突き刺すといい具合に弾力が返ってくる。  おいしそう。 「分かる。うちのおふくろなんか、せっかく高い卵を買ってきているのに、そんなに火を通しすぎちゃったらもったいないでしょとか言うぜ」  秋斗と二人、何気ない会話を楽しみながら朝食を食べる……本当に夢みたいだ、と友悟はしみじみと幸せを噛みしめる。  二人とも半熟卵は苦手っていいう新しい共通点も見つかったしね。  食事はとてもおいしかった。  友悟は普段の朝より多く食べたかもしれない。  それにしても本当に人間って現金だよなあ……。  はっきり言ってもうすっかり元気だよ。昨日の熱が嘘みたいっていうか。    友悟は風邪を引くと、いつも絶対に長引き、何日も寝込んでしまう。  食欲もまったくなくなり、治るときにはぐんと体重が落ちる。  なのに秋斗がいっしょにいてくれるだけで、一晩で熱は下がり、おなかがきゅうきゅうとうるさいくらいに食欲もあって。  ……恋心のパワーというのは、免疫力まで高めてしまうものなのだろうか?  友悟が人体の不思議について、つらつらと考えていると、ふと強い視線を感じた。  顔を上げると、秋斗がじっと友悟を見つめていた。 「な、なに? 秋斗」  思わず声が上ずってしまう。

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