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第77話
「えっ?」
「昨日の昼休みに加納さんに呼び出されて、二人してどっか行っちゃって。そのまま二時間近くも戻って来なくて……。それって彼女と付き合うことになったってことでしょ!?」
友悟はまるで鉛でも飲み込んだかのような重苦しい気持ちだった。
せっかくさっきまで二人で楽しく朝ごはんを食べていたというのに、どうして秋斗はそんな楽しい雰囲気をぶち壊しにするような、嘘? 冗談? を言うのだろう。
友悟は唇を噛みしめて秋斗をにらんだ。
秋斗は友悟の激昂に目を見開いて驚いていたが、やがてなにやら考え込んでしまった。
シャープなラインがとてもかっこいい顎に、細く長い指をあてて、しばらく沈思黙考していたが、なにかに思い至ったように顔を上げた。
友悟を見つめ、口を開く。
「ああ……そうか。そうだな。そう言われれば、そんなふうに思われてもしかたないか」
そんなこと、今更どの口が言うのか。
友悟は喉元で引っかかっている涙をこらえながら、秋斗へ冷たく言い放った。
「そんなふうに思われてもしかたない? そんなふうにしか思えないよっ。宏たちだって秋斗に憧れている女の子たちだって、みんなそう思ってたよ」
「違う……違うって! 友悟、誤解だよ」
「なにがだよ!?」
「ちゃんと話すから聞いてくれよ、頼むから……」
「…………」
友悟は不承不承黙った。
まだ心の中では嵐が吹きすさんでいたが、秋斗の瞳がとても真摯で真っ直ぐだったから。
「おまえが言った通り、昨日の昼休み、加納に呼び出されたあと、オレたちは屋上へ行ったんだ。そこで確かに加納に告白された、『付き合って欲しい』って」
……やっぱり……。
もう分かっていたことではあったが、秋斗本人の口からはっきり聞かされると、ショックは大きかった。
「でも断った」
続いた秋斗の言葉に、友悟は一瞬耳を疑った。
「えっ?」
信じられない気持ちで顔を上げ、秋斗を見る。
「オレには、片思いだけど好きな人がいるから、ってそう返事した」
そんな言葉を紡ぎ出しながら、秋斗の瞳は真っ直ぐに友悟を見つめている。
彼の視線があまりにも熱っぽくて、友悟は半ばパニック状態に陥ってしまった。
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