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第80話
「秋斗……」
秋斗の真摯な気持ちが伝わってくる。
彼の瞳の色や声、抱きしめてくれる腕の力強さから。
でも……。
「僕なんかのどこがいいの? 女の子の代わり……ってことはないよね?」
自分で聞いておきながら、そんなことはないかと即座に心が否定した。
だって秋斗には僕を女の子代わりにする必要なんて全然ないんだから。
秋斗を思っている女の子は数えきれないくらいいて、それこそどんな美女でもかわいい子でもよりどりみどり選び放題だ。
そして秋斗も否定の言葉を口にした。
「そんなはずないだろ」
少し怒ったような口調で。
でも友悟は、彼に『おまえだから好きになったんだ』と言われても、自分にそこまで魅力があるとはどうしても思えない。
だからちょっぴり不安なのだ。
「秋斗は僕のどこが好きなの……?」
「……おまえ、そんなこと聞くなよ」
秋斗が照れている。
「ね、教えて」
「そりゃたくさんあるよ」
「例えば?」
しつこく問い詰める友悟に折れて、秋斗が答えてくれる。
「例えば……いっしょにいると楽しいし、すごく癒される。趣味も合うし。顔立ちも好みだよ。それにおまえは、とてもがんばり屋だから。体育のマラソンにしたって、途中リタイアはしたことがないだろ? いったん始めると最後までやり抜く。そういうときのおまえってさ、瞳が真っ直ぐで強くて、男っぽいんだ。うさぎみたいな見た目とのアンバランスさがとても魅力的で……」
「も、もういいよ、秋斗」
聞いているうちにどんどん恥ずかしくなってきてしまった。
秋斗は友悟の耳元へ唇を寄せると、甘い声で囁いてきた。
「なんならずっと、おまえの魅力について話し続けてもいいけど……?」
彼の吐息が熱くて、友悟の体がゾクと甘く疼く。
「でもさ、友悟、本当おまえへの思いが叶う瞬間が来るなんて信じられないよ、オレ。絶対ふられるって思って、それでもせめて『親友』という立場は死守したいなんて思いつめてた。ずっと」
友悟にしてみれば信じられない言葉を紡ぎ出しながら、秋斗の唇が耳元から徐々に肌を這い、
「……ん……」
二人の唇が重なった。
秋斗は何度も何度も唇をついばみ、気づけば友悟はベッドへ押し倒されていた。
友悟にのしかかってくる秋斗。
二人の重みでベッドが軋む音が、妙に淫らに耳に響く。
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