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雨音の家 11

ところが、東城のマンションの大きな門の前までくると、入るのをやや遮るように高級車が停まっていた。 この界隈では珍しくもない高級車だ。 マンションの関係者だろうと思いあまり気にもしないで脇を通り過ぎようとしたら、軽くクラクションを鳴らされた。足を止めて周辺を見る。自分以外誰もいない。 後部座席から男が出てきた。長身でラフな服装に薄手のコート姿だ。 見てすぐに思い出した。東城の祖父の通夜で、会場の中を案内をしてくれた東城の親戚だ。 名前は、東城達史。 「こんばんは」と男は礼儀正しく挨拶をしてきた。「この前、お通夜の席で会ったの覚えている?君が弘一郎と一緒に住んでるって聞いてね。少し時間を、とってもらえないかな」 広瀬は彼を見上げ、首を横に振った。 「君に聞きたいことがあるんだ。それほど時間は取らせない。私のビジネスに関係することでね。私が何日もここで君を待っているよりも、一度で片付けた方がいいと思うけど」脅しにしては弱いが、選択肢はないという口調だった。

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