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雨音の家 23

だから、今はカップの中のチキンスープを冷ましながら口にして、のんびりできる。 広瀬の口に軽くキスを繰り返しながら東城が言う。 「なあ、質問してもいいか?」 「ん?」広瀬は首を傾けた。「なんですか?」 「こんなときに言うのもなんだけどさ、今日、お前を車で送ってきたのは、誰だ?」冗談っぽく言っているがかなり気にしている口調だ。 「東城さんの親戚です。名前は、東城達史さん。ベンチャーキャピタルの経営してるって言っていました」 「東城達史?」と東城は聞き返した。「ああ、達史さん、な。でも、なんで、達史さんのこと知ってるんだ?」 「東城さんのお祖父さんのお通夜で会ったんです」 東城はうなずいた。そして、嫌そうな顔をして軽く額をおさえた。 「達史さんに会ったのか。それで、お前、ナンパされたんだな」そう言って解説する。「昔から達史さんは手の早い遊び人で、気に入るとすぐに口説くんだよ。後先考えずに。もういい年だっていうのに、いまだに浮気者みたいな生活しやがって。しかも、あきらめが悪くてしつこいんだ」 「結婚指輪してましたよ」 「離婚協議中だ。3人目の奥さん。本人はいつも別れたくないんだけど、相手に愛想つかされちゃうんだ。当たり前だよな。達史さんは、何人でも同時に好きになるんだ。一夫多妻を受け入れられる相手じゃないと、無理なんだ」と彼は言った。「で、達史さん、お前を口説きに来たのか。いくらなんでも、俺んちの前にまで来るなんて、頭来るな」 「口説きにではないです」と広瀬は答えた。そして、東城達史との話の内容をかいつまんで東城に話した。 聞き終わると東城はため息をついた。「株主総会は6月だ。まだまだ先なんだから黙って見てればいいのにな。ビジネスの話とか言ってたのかもしれないけど、それにかこつけてやっぱりお前を口説きに来たんだよ」と東城は言った。「今度、釘さしとくよ」

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