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雨音の家 32
引っ越し当日、広瀬は仕事で、終わってから新しい家にむかった。
玄関のドアの鍵はすでにもらっていたが、その日は東城が休んで引越しの采配をしていた。
この家にくるのは、2回目だった。
最初の日の下見以来、忙しくてくることができなかったのだ。
家は前見たのとはすっかり変わっていて、何もかもが新しく機能的になっていた。
夜の窓から見える庭は、整然と刈り込まれていた。母屋から続く木々と一緒に庭師に整備してもらったのだと東城が言った。
「おかえり」と、家に入った広瀬に東城が言った。「ようこそ、新居へ」
東城が一通り家の中を案内してくれた。
リビングやダイニングは、東城のマンションのそれよりもさらに広くゆったりとしている。
部屋数が多いので、二階には広瀬の個室まであった。一階の奥のトレーニングルームがあり、ジムの機材が一通りそろえていた。
一階の浴室からは庭が見えるつくりになっている。雨が降り出してきたようだった。
「今日は、暴風雨になるって天気予報が言ってた」と東城が言った。「嵐の船出だな」
まだ片付いていない荷物も多かったが、なにはともあれ、その日は眠ることができた。
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