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春の酔い 6

「弘ちゃんの上司って人から連絡があって、なんだか脈絡のない話をされて、要は頭をだれかに殴られて、意識がなくなって救急で運ばれたって話だったの。意識が戻った後も発言や動作が不安定だったらしいから、上司の人が緊急事態だと判断して家族に連絡してきたのね。それで、美音ちゃんが搬送先の病院と交渉してくれて、こちらの医療センターでCTとったり検査したのよ」と東城の母は言った。 「検査の結果では特に問題はなかったんだけど、様子をみたいし、弘ちゃん家に帰したらすぐに無理しそうだから明日までここに入院させることにしたの」 倒れた後発言や動作が不安定だった、というのはどういうことなのだろう、と思った。 東城の上司の福岡は、強引で人のことを斟酌しないタイプだ。その福岡が家族に連絡しないとまずいと思ったくらいだから、かなり様子が異常だったということだろうか。 黙って東城を見ていたら、急に彼女に抱きしめられた。心臓が飛び出るくらいびっくりした。 「心配しなくていいのよ。頭打って軽めの脳震盪になっただけだから」と東城の母親は広瀬に言いさらにぎゅっと強く抱きしめてくる。 そして、何度も心配するなと言われた。

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