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春の酔い 11
「自分でする?」と東城は聞いた。「今ならすんなり入ると思うけど」
広瀬は答えない。目は向こうを見ている。
「もう一本入れるな」と東城は言った。「この感触、好き?」広瀬の弱い部分を刺激する。
「なあ、こっち見てくれよ」知らん顔されたらさびしいだろ、と彼の返事をしつこくねだった。
紅色に染まる乳首をカリッと噛んだらやっとこちらを向いた。すっかり潤んだ透明な目だ。
「キスして」と言うと、頭を軽く持ち上げて唇を重ねてきた。
「入れてひっくり返したら、お前、動ける?」と聞いた。我ながら身もふたもないモノの言い方だと思う。
だが、広瀬はぼうっとしていて意味が分からないようだった。「どう?」と聞き返された。
「こうして、いれるだろ」と言いながら、東城は指を抜きながら後孔を広げ、自分の昂ぶりを差し入れた。
広瀬が細い声をだす。手足に力が入るのを、なでてなだめながら、まだ、少し狭かったところに、ゆっくりとねじこんだ。広瀬の声がつぶつぶと耳に聞こえてくる。自分は自分で狭い中進み、肉襞の中押し込めていくと、喉の奥から声がもれてしまう。気持ちよすぎて、このまま腰を強く動かしてしまいそうだ。だけどそれはなんとかこらえた。
興奮をおさえながら慎重にもう一度身体を動かし、広瀬を抱きしめながら反転させて彼を自分の腰の上にした。「どう?」。ちょっとひきつれている中を、動かして、気持ちのいい場所にする。
広瀬は、胸に顔を埋めてじっといる。
「動ける?無理?」と聞いてみた。広瀬は、身体の力がすっかりない。だめなら、もう一回体勢を変えよう。
広瀬は、手をのばし、東城の肩にかけた。それから、腰をじわりと動かす。自分でそうしながら、声を出している。
何回か動かされたあと、止まりそうになった。もう、感じすぎて動けないのだろう。
がまんできず最後は下からがつがつと腰をつきあげた。彼の中が律動を繰り返し、軽く悲鳴を上げている。広瀬の方が先に達して、東城の腹に白濁をこぼした。その、かれの収縮を味わって、東城も広瀬の中でいった。
広瀬は、東城を見下し、何度もキスをしてくれた。まばたきした右目から涙が落ちてきて、ぽつん、と東城の頬におちた。
広瀬は、ベッドの隅で丸くなって眠っていた。
前に、マンションに来た最初の頃も、こんなふうに縮こまっていたような覚えがある。本人はそんなものだとさして苦にはしていないが、知らない場所は苦手なのだ。
この新しい家に強引ではあったが同居するまではよかったが、そのまま自分が仕事で長い時間不在にするつもりはなかった。広い知らない家で、一人ぼっちでどうしていたんだろうかと思った。今と同じように、こんなふうに、小さくなっていたのだろうか。まあ、広瀬のことだから、東城がいなくて、かえって気楽にすごしていたのかもしれない。
怪我をして入院したと聞いても、慌てもせずにいつもの無表情でいたようだから、気にかけなくてもいいのだろう。
本音で言えば、もうちょっと心配したり気をもんだりしてくれたったよさそうなものだが、期待はしないように自分に言い聞かせている。
病院に顔を見に来ただけでも感謝しなきゃ。広瀬は、東城の家族とはできるだけ接触したくないなかで、医療センターにやってきたのだから。
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