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春の酔い 15

目が覚めたら、そこは一階の廊下だった。敷布団が敷かれていた。 身体の上には掛け布団がかけられ、頭の下には枕がある。東城が、やってくれたのだろう。 身体中がこわばって痛くて、さらに気分が悪い。なんとか起き上がった。ふらつく足で二階に上り、寝室のドアを開けた。 カーテンが開いていて、もうすっかり朝だ。東城は起きて着替えていた。 広瀬に気づくと「大丈夫か?」と気遣ってくる。 広瀬はうらめしそうに東城を見た。 「横になってろよ」と彼が言うので、言われた通りにした。 しばらくすると、水と二日酔い用のドリンクをもってきてくれた。 広瀬は、それをうけとると、頑張って飲んだ。 「顔色が、最悪だな」と東城は言った。「今日も、仕事だろ?」 広瀬はうなずく。後、何分くらいすれば、ドリンクが効くだろう。 「ぎりぎりまで横になってろ。大井戸署の近くまで車だしてやるよ」 その言葉に甘えることにして、目を閉じた。気持ちが、本当に悪い。 「昨日はどこで飲んでたんだ?」と運転しながら東城が質問してくる。「お前が正体をなくすまで飲むのって初めてだ」 自分でもそう思う。記憶が全くなくなるのは何年ぶりだろうか。 「本庁から偉い人が何人か来ての飲み会だったんです」と広瀬は答えた。 「お前も同席したのか?」 「はい。課長と高田さんに命令だって言われました。一次会は普通だったんですが、二次会以降で、すごく飲まされてしまって」 おそらく三次会まで行ったのだろうが、覚えていない。隣の席に座った偉い人が、広瀬や何人かの若手にプライベートの質問やかなりきわどい下ネタを話していたことは断片的に覚えているが、それは一次会だったのかもしれない。 何にしても酒のことを思い出すだけで、気持ちが悪くなってきそうだ。

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