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春の酔い 20
キャンプ場では、広瀬がいなくなったので大騒ぎだった。
大人たちは、現れた広瀬を抱きしめ、どこに行っていたんだと叱った。
「林の方にいってたのか?」口々に質問される。
広瀬はうなずいた。
「よく、一人で戻ってこれたなあ」
「送ってもらった」
「送って?誰に?」
「どうしてここまでついてきてくれなかったのかしら?」
「鬼の子だから、来られないって」
大人たちは顔を見合わせた。「鬼の子?子どもと一緒だったの?」
広瀬はうなずいた。「森に住んでる、鬼の子だって言ってた」
大人たちは笑った。「誰かしら」
「向こうは別荘地で大きなお屋敷がいくつもあるから、そこの子供じゃないか」
「からかわれたのね」
「なんにしても無事でよかったわ。親切な子がいてよかった」
最後にまたオバサンの一人に抱きしめられた。
その後は、大人たちはバーベキューの準備に戻った。
年上の従兄弟たちが広瀬の見張り番になるように命令され、広瀬は彼らと一緒に川で魚やカニをとった。
次の日は雨で、早々にキャンプ場を引き上げることになった。広瀬は、林の方を見た。あそこで鬼の子が自分を待っているかもしれない。だが、他の遊びに気をとられすぐに忘れてしまった。
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