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夏休み 10
その日の夜遅くに、瑞斗は自分の部屋をでた。広瀬に借りた本も読み終わってしまった。
小腹がすいたので冷蔵庫をみると丸い西瓜が入っている。もう冷えたはずだ。切ろうと思ったが包丁がどこにあるのかわからない。
広瀬に聞こうと思い家の中をさがした。
広瀬は、オバさんたちが噂していた以上の美形だった。吸い込まれそうな透明な目をしている。
あまりにも整いすぎているので、整形手術してるのかときいたら、また絶句された。
広瀬には言わなかったが、父親の姉たちがそうも噂していたのだ。あんなに整っているということは普通はないだろう。目と鼻、もしかするとあごもいじっているにちがいない、と話していたのだ。愛人だから、金持ちの弘一郎に取り入るためならなんだってする、というようないいかただった。
弘一郎は東城の一族では異色で警官になんかなってる。そのくせこのあいだ亡くなった医療グループの創立者の市村の祖父の財産を相続しているらしく、かなりの金持ちだ。おまけに昔から美人に弱いらしい。整形美人が近づいてきてもおかしくないといわれていた。
多分、広瀬に直接会ったことがないのか、会っていたとしてもよく見てないからそんなことを言っていたのだろうと瑞斗は思う。
広瀬は、お金目当ての愛人というイメージにはほど遠かった。聞いていたよりももっときれいで清らかだった。
そして、愛人というには東城への態度がそっけなかった。父親の女のようにベタベタした甘えた感じは全くない。それどころか東城の方が広瀬に気を使ってご機嫌を取ってる感じだ。
愛人じゃないとするとなんなのかはわからない。
もっと別な関係だ。なにかはわからないけど。
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