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夏休み 15

瑞斗は窓際に座り込んだ。ここにいないで、部屋に帰らなきゃと思ったが、下半身が重くなり動けなかった。 瑞斗は広瀬のシャツを拾い上げて匂いをかいだ。洗剤の匂いに混じって、広瀬の体臭がかすかにする。その匂いを求めて深く息をする。 まるで今ベッドで東城の愛撫に濡れている広瀬が、すぐここにいるようだ。自分の目の前で乱れて痴態をさらしている。 「んー」広瀬は別な声をあげた。「ああ、東城さん、もう、いきたい。じゃないと、また、前みたいにおかしくなっちゃう」 「ちょっとがまんして」と東城はいう。「あ、自分で触るなよ」 「いやだ。はなして。もう」 「わかったから、もうちょっとだけまって。ゴムつけるから」 がさがさと音がした。 「足あげて」と東城はいう。 広瀬が声を長くあげている。苦痛の声ではないのは瑞斗にもわかる。 悦んでいるんだ。あんなとこにいれられて。気持ちいいんだろうか。しばらくすると、広瀬の声が東城を呼びながら奥をついてと言う。言葉は何度も繰り返される。 「すごいいやらしい顔してる。きれいだ、広瀬」東城がささやいている。 瑞斗は、声を聞きながら広瀬を想像していた。手を自分の下着の中に入れて、熱くなっている自分の性器にふれた。 彼の中はどんなんだろう、と思う。おまけに広瀬はなんども濡れた声で「東城さん」と呼び、口に出すのも卑猥な行為をねだり続けている。瑞斗は自分が呼ばれ、ねだられているような気持ちになる。 東城が自分の欲望で広瀬をついているのだろう。広瀬はそのたびに声をたて、ジェルがかきまぜられる。 広瀬の声が切なくなり、しばらくして深い息遣いがきこえた。一緒に瑞斗も手の中に出していた。 やばい、と思う。こんなところで何をしてるんだ。 寝室からくぐもった声が聞こえた。「久々なような気がする。そうでもないんだけど」と東城が言っている。「すげえ気持ちよかった」 「ちょっと、何してるんですか。もう、今日は、だめです」広瀬の声がもとの冷静なものに戻っていた。 「えー。まだ、そんな遅くないぞ」 「疲れてるんです」とそっけない。 「そういって、さっきも途中でよくなってたじゃないか」 「それは、東城さんが無理に」と広瀬は答えている。 また、キスをする音がした。 シーツが動く音がする。東城が広瀬にしつこく愛撫をほどこしているのだ。 キスを重ねるうちに広瀬の声が冷静なものからだんだんに湿ってくる。「ふ、」と広瀬は言った。「だめって言って」 「このままじゃお前だってつらくなるだろ」 「あ、、東城さん、、」広瀬の声は、また、かなり熱がまわっていた。 「熱いな、お前」と東城が言う。そして、しばらく黙った後で、「なあ、お前が熱いって思ってたけど、この部屋、かなり暑いんじゃないか?汗とまんないんだけど。脱水になりそう」 「え?」広瀬の声はまたぼんやりしている。 「クーラー、かけてる?」と東城は聞いた。 「さっきつけましたけど、きかないんですか?」 カサと音がした。「窓、開いてる。いつあけたんだよ」 「朝、空気入れ替えたくて」と広瀬は答えている。 「開けたらしめろよ。暑いだろ」と言って東城が窓をしめたようだ。声は聞こえなくなった。 瑞斗は静かに立ち上がった。広瀬の服を手にして、部屋をでた。足音をさせないように自分の部屋に戻った。ティッシュで汚れてしまったほうの手をぬぐう。 自己嫌悪がおそってくる。なんで、広瀬を想像してやってるんだよ俺。それにこの広瀬の服、どうするんだよ。少しだけ自分の汚れがついてしまった。洗濯機に放り込んでおいたらわからないだろうか。 だが、彼らがまたあの寝室で身体を絡ませているかと思うと、もう一度ベッドに横たわって目をとじ、下腹部に手をのばした。広瀬のシャツの匂いをかぐ。だめだ、と思いながらもやめることができなかった。

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