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夏休み 17
家に帰ると、鍵が壊れた裏門の前に黒い外車が停まっていた。東城は車の中をみて渋い顔をしていた。
「誰?」と聞いた。
「達史さんだ。お前も知ってるだろ」
玄関の前で、長身の男が暑そうに立っていた。顔を見て思い出した。父親と仲がいい親戚の男だ。
「やあ」と達史は言った。「弘一郎、久しぶり」
「そうですか?」と言いながら東城は仕方なさそうに玄関の鍵をあけた。
「6月の株主総会以来かな」
「それほど久しぶりでもないですね」
達史は、玄関に入り、家の中を見渡した。「外見よりも広いな。天井が高いせいか。涼しくて助かったよ。外で待っていたら暑くてまいりそうだった」
「よく俺が休みだってわかりましたね」
「美音ちゃんに聞いたら、教えてくれたよ」
「今度から、教えないように頼んどきますよ」
「そう言うなよ。本当は広瀬くんにも会いたかったんだけど、お前が怒るからいないときをわざわざ見つけて来たんだ」
達史は、家の中を勝手に進み、ドアを開け、リビングにたどりついた。ソファーにゆったりと座り、足を組む。
「いい家だな。ずいぶん前に来たことがあるけど。まだ、弘継叔父が新婚だった時にパーティーがあったんだ。リフォームでだいぶ変えたんだな」
「何の用ですか?」と東城が聞いていた。
「いろいろとね。ところでこのうちでは来客に冷たいお茶も出してくれないのかね?」
「誰か、お茶をいれそうな人間が、このうちにいますか?」と東城は辺りを見回しながら答えた。「キッチンはあちらですので、ご自由にどうぞ」
達史は笑う。「アイスティーが欲しいんだ。瑞斗、アイスティーはないかい?」と彼は立ち上がった。
「弘一郎は何を飲むのか?」そう言いながら、キッチンはどこ?と瑞斗に聞いてきた。
仕方ないので、瑞斗はキッチンに案内した。
達史が冷蔵庫を開けている。「冷たい飲み物でアルコール以外はコーラと牛乳くらいしかないのか」
「紅茶は自分でいれるしかないよ」と瑞斗は答えた。自分はコーラを飲むのでグラスに氷を入れる。
「じゃあ、僕もコーラでいいよ。弘一郎のもいれてやるといい」と彼は言った。
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