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夏休み 22

しばらくして、広瀬のGPSが示した場所の近くに来た。そこは繁華街でけばけばしいあかりが溢れている。広瀬をこの界隈に連れ込んで、あの不気味なヤクザの男は何をしているのだろうか。瑞斗はこぶしをぎゅっと握った。やっぱり精一杯抵抗すればよかった。広瀬を渡したりしちゃダメだったんだ。 自分は臆病だからいざって時に身体がすくんで立ち向かえないんだ。ずいぶん前にお父さんがお母さんを怒鳴りつけてた時も、何もしてあげられなかった。お母さんが家を出ていった朝も、知っていたけど止められなかった。自分がしっかりしてたら、守ってあげられたのに。 ハンドルを握る東城は冷静だった。瑞斗の話に慌てたり騒いだりはしない。刑事だからだろうか。ヤクザのところに行くのが怖くはないのだろうか。 片手でスマホを操作して、場所を探しながら運転をしていた。 そして、小さな路面の有料駐車場を見つけて車を止めた。 彼は、ポケットからメモを取り出すと電話番号を書いて瑞斗に渡した。 「俺が車を出てから、30分で俺か広瀬が戻らなかったら、このメモにある番号に電話しろ。事情を言えばすぐに手を打ってくれる」 瑞斗は素直にうなずいた。「わかった。この番号の人は誰?」 「俺の同僚で、一番信頼がおける人だ。名前は竜崎さんだ。勢田と広瀬のことも知っているから、話が早い。竜崎さんと話ができたら、後は彼の言うことに従え」 瑞斗はうなずいた。「弘一郎、大丈夫なの?」 「まあ、勢田も俺ともめたいとは思ってないだろう」 「銃は持ってるの?」 東城はかすかに笑った。「まさか。拳銃は携行許可とるの大変なんだ。私服刑事が拳銃を持って私的なことに利用なんて、大スキャンダルだ」 そして、車のドアを開けた。「竜崎さんに電話する件はあくまでもリスク回避をしてるだけだ。それほど、心配しなくていい。30分以内に戻ってくる自信があるから行くんだ」と彼は言った。

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