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夏休み 23
東城が車から降り、街中に消えていった。
瑞斗は、そのままじっと時計とスマホを交互に見る。今までの人生で一番長い30分だった。
勢田というヤクザが言っていた言葉が気になる。広瀬を裸にしてなんとか、って言ってた。もしかして、以前、広瀬をレイプしたというのだろうか。そんな口調だった。広瀬は怖そうなそぶりは見せなかった。いつも無表情だから実際にどう思っていたのかはわからない。
もし、勢田が、広瀬に乱暴をしているんだとしたら、絶対に許さないと瑞斗は思った。彼を傷つけようとする何者も許すことはできない。自分は今は力がないけれど、必ず力をつけて復讐してやる。
20分経っても東城と広瀬は戻ってこなかった。後、10分も待つなんて、と思う。その竜崎とかいう男にさっさと連絡した方がいいのではないだろうか。
それに、竜崎がすぐに電話にでなかったら、どうしたらいいのだろうか。車を降りて、探しに行く?110番通報する?あらゆる心配事と不安が頭の中に膨れ上がり、ぱんぱんになっていく。
後3分というところで、車の外に人の気配がした。コンコンとドアを叩かれる。見ると、東城が立っていた。後ろには広瀬がいた。
瑞斗はあわててドアのカギをあけた。
東城は運転席に滑り込み、広瀬は後部座席に座った。二人とも瑞斗が最後に見た様子と変わらなかった。
外を見てもヤクザが追いかけてきている様子はなかった。
東城は、エンジンをかけると、静かに車を出した。
「大丈夫だったの?」と瑞斗は聞いた。
「ああ」と東城は言った。「よく、じっとして待ててたな。よかった」
「何があったの?」
「勢田が広瀬に酒をだして、二人で飲んでた」と東城は言った。
平板な声だった。だが、しばらくするとぎゅっと唇を噛んでいた。いつもはうるさいくらいに話をする彼が黙っているのは、怒っているせいだろう。
後部座席の広瀬は無言で、窓の外を見ていた。窓ガラスにうつる彼の顔は青白く見えた。何を考えているのかは相変わらず全くわからないままだった。
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